2008年01月11日

少年の日8(前編) −時間よ、止まれ−

The Story 8 −時間よ、止まれ−




深津さんと、シロとの散歩から帰ってきたあと、

家族みんなで 朝ごはんを食べた。


炊きたてのご飯。

温かいお味噌汁。




「おかわり!」



「僕も!」


母「はい、はい。

 あんたち、朝からよく食べるね〜。

 あっちでも こんなに食べるのかい?」




「あったり前田のクラッカー!

 腹が減っては 戦はできねえってね。(笑)」



僕は、昨日までの 1人で食べる朝ごはん を思い出していた。

もちろん、『おかわり』 なんて したことない・・・。



僕は 場の雰囲気を 壊さないように

力の無い笑顔で 取り繕っていたんだと思う。



「良太? どうした? 食べないの?」


母の声に はっとした僕は がーっとかき込んだ。



「・・・。」




その後、広場に行って、

お兄ちゃんとキャッチボールをした。

さすがに投げる球が速い。

手が痛くなるほどの 重い球。



そのうちに キー君や ともちん、マサ、なおち、

みんなが自然と広場に集まってきた。




久しぶりに みんなとする野球。




あと何時間かしたら、あの家に帰らなくちゃいけない。

そう思うと、今のこの時間が とても大切な時間に思えた。

愛おしかったんだ。



だから、一生懸命、遊んだ。

本気で 野球を楽しんだ。





『時間よ! 止まってくれ!!』





僕は、心からそう叫んでいた。





でも、楽しければ楽しいほど、時間は早く過ぎるもの。

とうとう、お昼ごはんの時間になってしまった。

ここで みんなとは お別れだ。





「バイバーイ!」

「またな、バーイ!」

「また、野球やろうぜ!」

「じゃあな!」




今まで 当たり前のようにやっていた野球。

こんなにも楽しいものだったんだ・・・





再び 家族全員でのご飯。

これが 最後のご飯。




僕たちは、お母さんが握ってくれた おにぎり を食べた。




あっちの家では おにぎりも 自分で握っていた。

あんまり不恰好だから、学校のみんなに

見つからないように食べてた 自作のおにぎり。



材料は おんなじ お米と塩の 食べ物なのに、

やっぱり、お母さんのおにぎりは 特別に美味しい。




「ねえ、お母さん。

 帰り道で お腹空くかもしれないから、

 おにぎり 持って帰りたいな。」




「でも、晩御飯、食べれなくならない?」




「うーん、

 でも お母さんの おにぎり もっと食べたいもん。」




「しょうがないねえ。

 じゃあ、帰りに持たせてあげるよ。」


お母さんは おにぎりを握りはじめてくれた。




午後、お母さんとお兄ちゃんとお姉ちゃんとで、

お父さんのお墓参りに行った。

お墓参りって行っても、すぐ裏のお寺さんだから、

歩いて数分のお墓だ。



帰り道、少し足を伸ばして、商店でお団子を買ってもらう。




こんなにも 楽しい時間。

こんなにも 幸せな時間。




『やっぱり、もう あっちの家には 帰りたくない。

 もう、あんなに 寂しい思いは 嫌だよ!!!』




この言葉が 喉まで 出かかった。




だけど、やっぱり言えない。

本当に つらいのは お母さんだから。

僕が 我慢すればいいんだ・・・。








「そろそろ伯父さんたちが来る時間だよ。

 忘れもんは ないかい?」



「う、、ん、、。」



「はい。

 おにぎり、持って行きな。」



「うん・・・。」



「あとね、これ、セーター。

 冬になったら 着てちょうだいね。」



お母さんは すごくカッコイイ セーターを

僕に あてがってくれた。

ちょっと大き目のセーター。

胸のところに 白いラインの入った、水色のセーター。




「こんなん 今 着たら 暑いよ。(笑)」




「だからぁ、冬になったら 着てちょうだい。」




「うん。

 じゃあ、冬に着る。





 ありがとう、





 お母さん・・・





 ありがとう・・・」







僕は 涙をこらえきれなくなっていた。

お母さんも 目にいっぱい 涙を溜めていた。





「ごめんね、良太。



 ごめんね。」




お母さんは 何に対して 「ごめんね」と言っていたのか。

もしかして、全部わかってたんじゃ・・・




(つづく)



pegasus_oda at 10:42|PermalinkComments(0)TrackBack(0)この記事をクリップ!少年の日 

2008年01月10日

少年の日7 −深津さん−

The Story7 −深津さん−




久しぶりにお母さんの手料理を食べる。

そこには、お姉ちゃん、お兄ちゃんがいる。



温かい、家族の会話。

お父さんは いなくて 寂しいけれど、

それでも、家族が揃うことが、

こんなにも幸せだなんてこと、初めて知った。



お風呂には お兄ちゃんと一緒に入った。

お兄ちゃんは、新しい生活に 馴染んでいた。

野球部も すごく楽しいらしい。




「お前も、中学になったら 野球部入れよ。

 練習は すごく厳しいけど、

 絶対 将来 役に立つと思うぜ!」



兄は、大人みたいなことを

言うようになっていた。




「そうだね。

 じゃあ、中学になったら 野球部、

 入ろうかな。」


僕は 兄に対しても、本当のことは

言えなかった。






次の日の朝、僕は、すごく早く目が覚める。

あいつのことが 気になっていたからだ。




シロ。




そうだ!

シロに 会いに行こう!



シロを飼ってくれている 深津さんの家は

村の端っこだが、歩いていける距離だ。




お勝手場にいる、お母さんに言った。




「お母さん、シロんとこ 行って来る!!」



「良太?

 朝ご飯は?」



「あとで!」


僕は シロに会いたくて 

居ても立っても いられなかったのか、

気付いたら 走り出していた。




僕もシロも 会うのは 半年ぶりだ。

(僕のこと、覚えてくれてるかな?)



息が続くまで、ダッシュで走った。

息が切れても、ちょっと歩いて またダッシュ。

1秒でも早く シロに会いたかったのだ。



深津さんちに 着く。

深津さんは、魚屋をやっている。

お店の先で すぐに僕に気付いてくれた。



深津さん
「おーーーーっ、


 良ちゃん、久しぶりだなぁ。


 どうした?

 今、こっちにおるんか?」




「うん。

 1日だけ、帰ってきた。

 だから シロに会いに来た!」



深津さん
「シロは 庭の方にいるぞ、

 良ちゃん来たら、シロも喜ぶさ。


 おっと、これ、持っていってあげな。

 シロの好物の 干物だ。」



すぐに干物を受け取ると、

僕は シロのいる 庭へ走った!





いた!!!!






「シローーーーーーー!!!」





シロ
「ワン!!! ワン!!! ワン!!!」






シロは、すぐに僕が分かったみたいだ。

小屋に つながれたまま 僕に飛びかかろうとしてきた。

でも、鎖が ぴーんとなって、ひっくり返る。

それでも こっちに突進しようとして来る。

また ひっくり返る。



シロの喜びようは すごかった。

僕は シロに駆け寄った。





「シロ! シロ!! シロ!!!」


「ワン! ワン!! ワン!!!」


シロは、僕に飛びつくと、

ペロペロ顔を なめてくれた。




「シロ!

 元気だったか?

 大きくなったね〜。


 よしよし。

 シロ!」


さっきもらった干物を

シロにあげる。


ちゃんと、お手の姿勢をとった。



「えらいぞ〜、シロ!」


シロは、お手 だけじゃなく、

おすわりも、ちんちんも

伏せもやってくれた。




「すごい!

 シロ!!

 すごいぞ〜!!」




しばらくシロと遊んでいると、

深津さんが、やってきた。



深津さん
「どうだ〜、

 シロ、頭いいだろ?」



「うん。

 すごい!」



深津さん
「シロとは 半年ぶりか?

 大きくなっただろ? シロも。」




「うん!

 あの頃は まだ、こんなだったもん。

 すごく大きくなったね。」



深津さん
「犬は 1年で大人の大きさになるんだ。

 だから、もうすぐ こいつは大人だ。

 良ちゃんよりも 早く成長するぞ。」




「へえ、すごいね、シロ!

 もうすぐ 大人になるんだね。」



深津さん
「おお、そうだ。


 そろそろ、シロ散歩させる時間だ。


 良ちゃん、一緒に行くか?」




「うん!

 行く!行く!」




僕は シロと 深津さんと 散歩を楽しんだ。



散歩の途中、話は 僕の生活ぶりに及んだ。



深津さん
「どうだ?

 あっちの生活は もう、慣れたか?」




「う、、、



 うん、、、



 まぁ。」



深津さん
「あっちには 同じ年の子が いるんだろ?

 仲良く やってるか?」




「・・・。」



深津さん
「どうしたんだ?

 仲良くないのか?」



僕は、その場に立ち止まった。

そして、大粒の涙が出るのを

こらえることが できなくなっていた。



寂しくて、寂しくて、、、

ひもじくて ひもじくて、、、



とうとう、深津さんと シロの前で

泣き出してしまった。

もう、叔母さんに口止めされていることなんて

どうでもよかった。



『お母さんに 心配かけたくない』

その一心で ずっとずっと 我慢してきたけど、

深津さんの優しい声と 無邪気なシロ、

その前では もう、我慢できなくなっていた。



深津さんは、尋常じゃない僕の泣き方を前にして

心配して 聞いてくれる。



深津さん
「良ちゃん、、、、


 色々 あんだな?


 良かったら、おじさんに、

 聞かせてくれないかな。」




僕は 向こうに行ってからのこと、

紀夫の いじめのこと、

叔母さんの 鬼のような態度、

洗いざらい、

全部

全部、

ぜーーーんぶ 深津さんに話した。



深津さん
「良ちゃん、、、




 そうか、、




 そんなに、、、




 随分 我慢してきたんだな。」




深津さんは、その場で 僕を抱きしめてくれた。

そして、その大きな手で、

僕の頭を よしよし してくれた。







深津さんは 


お父さんの 匂いがした。。。






シロは 僕の流した涙を


ペロペロなめている。。。








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2008年01月09日

少年の日6 −嘘−

The Story6 −嘘−


僕は 伯母さんの家に来てから、

ほとんど しゃべらない子に なっていた。



必要最低限の

「はい」

「わかりました」

だけで会話していた。



子供だから、子供同士で 野球したり、

山を走ったり、ベーゴマやったり、、、

それが普通。



だけど、僕には、友達がいなかった。

近所の子供は 以前から紀夫の友達だ。

紀夫は 僕を 仲間に入れてくれなかった。



こっちにきて、最初の頃、紀夫と激しくケンカした。

理由は 何だったのか覚えていないが、

たぶん、紀夫の 陰湿な いじめに

反発したのだろう。




このケンカで、紀夫の目に 僕の指が入り、

もう少しで 失明するような ケガをさせてしまった。



ケンカした日、僕は 伯母さんに 思いっきり殴られた。



伯母さん
「あんたは なんて 野蛮な子だ!!

 紀夫を あんなんに しやがって!!

 失明したら どんな 責任をとるんだ!!」



どんだけ泣いても、どんだけ謝っても、

伯母さんは 僕を殴る手を 止めなかった。

僕が倒れると、何度も蹴飛ばされた。



そのうち 僕は 動かなくなり、

やっと 伯母さんは 暴力を止めた。




そんなことが あって、僕は トラブルを避けるため、

必要最低限のことしか 言わない。

極力 紀夫とも 伯母さんとも 関わらないことにした。




ところが、、、




ある日、突然、伯母さんが

ビッグニュースを持ってきた。


伯母さん
「良太!

 お母さんが お前に会いたいんだってさ。

 
 しょうがないから 今度の連休に 連れてってやるよ。

 一泊してきな。


 それと、これ、こづかいだ。


 好きなもの、買っておいで。」




伯母さんが お金をくれるなんて!!

だか、その意味が すぐにわかった。 



伯母さん
「いい?

 良太!

 お母さんに 何聞かれても、良いように答えるんだよ!

 
 『あの家では すごく良くしてもらってる』 ってね。

 じゃないと、お母さん、心配するだろう?


 お前は 優しい子なんだから、

 お母さん、心配させちゃ いけないよ。



 言ってる意味 わかるよね?」




「は、、、い、、。

 わかりました。」




***********************




久しぶりに 家に帰れる!

僕は 心から喜んだ。



前の日から 嬉しくって嬉しくって、

なかなか 寝付けなかった。



だけど、お母さんのことを思えば思うほど、

涙が溢れてきた。



会っても また こっちに戻ることになる。

ずっと一緒に いられる訳じゃない。


すごく嬉しい反面、

帰りのことを考えると 同時に 悲しくもなった。




当日、伯父さんの運転する車に乗り込む。

僕は、ずっと 外ばかり見ていた。



(道を 覚えよう)



伯父さんは 僕に 無関心だった。

僕が どんな生活をしているか、

僕が どんな思いをしてるか、なんて聞いてもくれない。



伯父さんと 伯母さんの

冷え切った関係からすると

それは当然だったかもしれない。



そうこうしてるうちに 見慣れた景色になった。

なつかしい風景。

田んぼ、川、山、広場、家々、キー君ち、、、



僕の家が 飛び込んできた。

半年前と なにも変わっていない。



(お母さん)




伯父さん
「さ、着いたぞ。」


伯母さん
「は〜ぁ、っと」



お母さんが 庭先で待っててくれた。



僕は 車から飛び降り、

ダッシュで お母さんの胸に飛び込んだ。




「お母さん!!


 お母さん!!!


 お母さ〜ん!!!」


僕は 赤ん坊のように お母さんの腕の中で泣いた。




「良太〜!!

 よく来たね〜。



 良太〜!!

 元気だった〜?」




「お母さん!!


 お母さん!!!


 お母さ〜ん!!!」




「なんだよ、この子は、、、


 赤ちゃんみたいだよ。



 (涙)



 さ、今日は ゆっくりしていきなね。

 お前の好きなご飯、用意してあるからね。」



伯父さんと伯母さんは、

さっきとは別人のように 仲の良いふりをして話し出す。


伯母さん
「やっぱり、お母さんがいいんだね♪」


伯父さん
「そりゃそうだろう、

 まだ子供なんだから♪」




お茶を飲みながら、色々と話をする。




「どうですか?

 良太は。


 ご迷惑かけてませんか?」



伯母さん
「迷惑だなんて、とんでもない!

 すごく 良い子ですよ。


 あいさつもキチンとするし、

 お手伝いもするし、

 うちの紀夫とも 仲良くしてくれてますわ♪」



伯父さん
「この前、みんなで 野球やったもんな?

 な?」



伯父さんと どころか、

誰とも野球なんて やってない、、、




伯母さん
「良太くんは よく手伝ってくれるんですよ〜♪

 自分から 率先して 茶碗 洗ってくれるんです。」



洗い物は 最初は 自分の食器だけだったが、

いつの間にか、一家全員の洗い物を させられていた 僕。




「そうなんですか〜。

 それ聞いて安心しました。


 良太、えらいね〜。」


僕は 作り笑いをしていたんだと思う。



伯母さん
「この前、うちで おはぎ 作ったんですよ〜。

 良太君に手伝ってもらってね。



 一緒に作った、ね?

 良太くん?」



おはぎ どころか、 あの家に行ってから、

甘いものなんて 食べた記憶が無い。

でも、同意せざるを得なかった。

どんな仕返しが待っているか分からないからだ。



そんな、嘘で塗り固められた話を 一通りした後、

翌日、夜、迎えに来ると言って 叔母さんたちは 帰っていった。






お母さん
「そろそろ、義行(兄の事)も 来る頃なんだけど、、、」



「え!?

 お兄ちゃんも来るの?!」


お母さん
「当たり前じゃない。

 今日は 久しぶりに 全員そろうのよ。」


お兄ちゃんも 僕と同じで、親戚の家に 預けられていた。

3兄弟のうち、お姉ちゃんだけが この家に 残っていた。




しばらくすると、お兄ちゃんが 来た。


僕「お兄ちゃん!!!」


兄「おう! 良太!!」




久しぶりの再会だ。



お兄ちゃんは、たった半年の間で、

ずいぶん背が伸びていた。


聞くところによると、お兄ちゃんの方は、

普通に生活できているようだ。

以前にも増して、明るく元気だ。



野球部に入ったらしく、そのためか、

体つきが 男っぽくなっていた。



お兄ちゃんが 笑う。

僕も 合わせて笑う。



しかし、笑いの種類が違う。



一方は 心からの笑い。

一方は 心を見透かされないための 笑い。




僕は、、、




お兄ちゃんが、、、





心の底から、、、





うらやましかった。。。







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2008年01月08日

少年の日5 −孤独−

The Story6 −孤独−




僕が 家を出る日の朝。

親戚の伯父さん、伯母さんが 迎えに来ていた。

僕の お父さんとお母さんの代わりになる人。



お母さん
「すみません、義兄さん。

 良太のこと、よろしくおねがいします。」



伯父さん
「なあに、心配すること、ないですよ。

 うちには よく似た年の 男の子がいますし、

 子供なんて、すぐ慣れますよ。」



伯母さん
「そうですよ。


 良ちゃん、


 叔母さんのこと、

 お母さんだと思って良いからね。」



僕は、この伯母さんが苦手だった。

いつも 香水なのか、化粧なのかわからないが

すごく きつい匂いがしているから。

派手な服装も タバコの匂いも 嫌いだった。




(お母さん、



 お母さん、



 お母さん、、、)




心の中で、『助けて』 と言っていたのだと思う。

でも、どうにもならないことは、

子供ながらに 理解していた。






僕が 預けられたのは、

父方の親戚の家だ。

お父さんの お兄さんの家。

僕からすれば 伯父さんにあたる。



この家は、5人家族。

伯父さんと 伯母さん、

子供は 男3人の兄弟。

3番目の子、紀夫は 僕と同い年だった。



伯父さんの家に着く。



伯母さん
「さてと、、、

 あんたの部屋は ここだから。」


与えられた部屋は、離れの納屋だった。

そこに急ごしらえされた部屋。



伯母さん
「ちょっとぉ?

 聞いてんの?」



僕「は、い、」



伯母さん
「晩飯は できたら呼ぶから。

 それまでに 荷物片付けときな!」



僕「は、い、」




伯母さんは、バンっと トビラを閉めて

外で、伯父さんと会話していた。



伯母さん
「まったく、いい迷惑だわ。

 あんたは いいわよ。


 仕事に行ってしまったら、

 家のことなんて、何もしなくていいんだから。

 ちょっとは 私の身にもなってよ!」



伯父さん
「そう言うなって。

 あいつは あいつで

 うちしか 行くところないんだから。


 養育費、浮いた分は

 好きに使ったらいいから。


 掃除とかだって、やらせればいい。」



伯母さん
「あの子、何考えてるのかわかんないのよ。

 ここに来るまで、殆ど口きかなかったじゃない。」



伯父さん
「まあ、多少は緊張してるんだろう。

 なあ、頼むよ。

 俺の立場も考えてくれよ。」 



伯母さん
「あんたの立場って、何よ!

 あんたは 私の都合を考えてくれてるわけ?」




***********************




最初のうちは、この家族と一緒に

ご飯を食べていたが、

いつの頃からか、

僕は、自分の与えられた部屋で 食べるようになった。 



僕の方から、そうして欲しいと 頼んだわけではない。

お母さんが出してくれてる わずかな養育費。

伯母さんは、それを少しでも浮かすため、

僕の分の、おかずの内容を変える必要があったのか。

それとも、単に 僕に色々することが

損だと思っていたのかもしれない。


何にしても、僕は 一緒の食卓に座らない方が良かったのだ。




僕は、食事前に、3兄弟の誰かに呼ばれる。



「おい、良太!

 ごはんだってさ!」



台所へ行き、自分で ご飯をよそう.

鍋の味噌汁も、自分で。

そこに、おかずがあればそれを、

なければ、ご飯と味噌汁だけを持って、

部屋へと行く。

おかずは ある日と無い日は 半々くらいだった。



ご飯を運ぶ途中で

三男坊に 背中を押されたこともあった。



あっ




紀夫
「あ、ごめん、良太。

 よそ見してたら ぶつかちゃった。」


盆は ひっくり返り、味噌汁は こぼれる。

茶碗も割れてしまった。



僕は 欠けた茶碗を見て、

震えた。




「伯母さん、、、


 ごめんなさい。


 お茶碗、割ってしまいました。」



伯母さん
「何やってんだよ!

 茶碗だって、タダじゃないんだからね!」



「でも、紀夫くんに、背中を押されたんです。」


伯母さん
「紀夫?

 あんた、良太の 背中押したの?」


紀夫
「ごめんなさい。

 よそ見してたら ぶつかっちゃった。」


伯母さんは 正直に言った紀夫を褒め、

その後、僕をにらんだ。


伯母さん
「良太!

 あんた、紀夫が わざとぶつかった風な

 言い方すんじゃないよ!



 あんた、茶碗割っただけならまだしも、

 紀夫の責任に しようってか?

 お前みたいなやつは 最低だよ!

 今日は メシ抜きだ!」




**********************




紀夫は 母親に好かれていた。

子供ながらに、大人の喜ぶことを 言うのが上手いからだ。


紀夫
「僕、一生懸命勉強して、

 立派な大人になるんだ!」


紀夫
「僕、今日、先生に褒められたんだよ!」

 という具合だ。





とある日、

僕の部屋から 紀夫が 出てきたのを見た。


その時は、「なんだろう?」と思いはしたが、

特に気にも留めず、部屋へ入り、

宿題をやっていた。



しかし、後から 伯母さんと 二人でやってきて、

その口から とんでもないセリフを吐いた。



紀夫
「良太が 僕の色鉛筆 盗んだ!」




「は?

 そんな、

 盗んでなんか ない!」



紀夫
「うそだ!

 僕のが 24色 なの、ずっと見てたじゃないか!」



24色の色鉛筆。

確かに、うらやましくて、

無意識に 見ていたかもしれない。

でも、盗むなんて、有り得ない。



伯母さん
「良太、本当に盗んでないんだね?

 じゃあ、机の中、見せてごらん。」


伯母さんは、僕の返事も聞かずに、

勝手に引き出しを開けた。



そして、僕は 自分の目を疑った。



そこには、24色の色鉛筆が 確かにあったのだ。



紀夫
「あ!

 やっぱり僕のだ!」



伯母さん
「良太?

 あんた、また嘘ついたのか?」




「嘘じゃないです。

 本当に 盗ってなんかいません。

 たぶん、紀夫くんが、

 わざと机に入れたんです。」



紀夫
「うそだ!

 僕は そんなこと しない!」



良太
「僕だって、盗むわけない!」



伯母さんは、紀夫を信用している。

でも、さすがにコレは 露骨すぎたのか、

これ以上、僕たちを 追求しようとは しなかった。 



伯母さん
「紀夫も 良太も、いいかげんにしなさい!

 ったく、

 良太が来てから、面倒ばかりだわ。



 紀夫、新しいの買ってあげるから、

 これ、良太に あげなさい!」



紀夫
「ほんとに?

 新しいの買ってくれるの?


 やったあ♪


 じゃあ、これ、良太に やるよ。」



伯母さん
「良太?

 あんたも、これ、あげるんだから、

 もう、意地張るの やめなさいね。

 わかった?」



僕「・・・」



伯母さん
「それと、理由はどうあれ、あんた、

 24色の色鉛筆、もらえたんだから、

 ありがとうの一言ぐらい 言ったらどうなの?」



僕は、唇を震わせ、声を発した。


僕「は、い、、、、

  あ、りがと、う。」






後日、紀夫は デパートで、

色鉛筆を買ってもらっていた。






それは 36色のものだった。









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少年の日4(後編) −お父さん−

(つづき)





僕は 父方の親戚の家に 預けられることになった。

お兄ちゃんは 別の親戚の家に、

お姉ちゃんと、体の不自由な おばあちゃんだけが、

お母さんと暮らすことになった。




あんなに仲良かった家族が、

バラバラに なってしまうなんて・・・




お母さんは、僕とお兄ちゃんに言った。
「お前たちは、来週から

 親戚のおじさんのとこへ 行くんだよ。

 そこから学校に通わせてもらうんだ。


 学校は 今の学校じゃなくて

 その家の近くの学校になる。


 だから、ちゃんと、友達にも

 お別れの挨拶、しとくんだよ。」




「いやだ! いやだ! いやだ!

 
 僕、お母さんとも お兄ちゃんとも

 キー君とも シロとも 離れるなんて

  
 いやだ! いやだ! いやだ!

 絶対 行かないから!

 絶対 いやだから!!」



お母さん
「そんなこと 言わないでおくれ。

 お母さんを 困らせないでおくれよ。。。


 お母さんだって、、、

 お前たちと別れるの、、、


 つらいんだよ、、、、


 わかっておくれよ、、、、(涙)」



お兄ちゃんは 小学校6年生なのに、

まだまだ 全然子供なのに、

この時は 泣いていなかった。

お兄ちゃんは、お兄ちゃんなりに、

強がっていたのだろう。




僕の家は、一家の大黒柱を失い、

とても母の手だけでは、3人の子供を養えない。

ましてや、体の不自由な おばあちゃんもいる。



生命保険が どうだったのか、

今となっては それは解らない。

でも、保険で家族を養えなかったことを考えると

入っていなかったのか、微々たるものだったのか。



だから、お母さんは、悩んで悩んで、

この選択をしたんだと思う。

本当に 辛かったのは お母さんだったはずだ。




そんな時、深津さんが訪ねてきた。




深津さん
「なあ、良ちゃん(僕のこと)、



 シロな、



 おじさんところで 面倒見てあげようかな、

 って思ってるんだ。




 親戚の家に、犬までは連れて行けないだろう?



 ここで飼うのも、お母さん、

 これから 何かと大変だからな。



 奥さん、良ちゃん、どうだろう?」




僕たち家族は、

「よろしくお願いします。」

としか、返事のしようがなかった。。。




「時々、会いにきてもいい?」



深津さん
「もちろんだ。

 良ちゃんの シロだからな。

 たまに、会いに おいで。」




子供の僕は、この運命を受け入れるしかなかった。

寂しくて、寂しくて、毎日泣いた。




いつまでも、この家に居たいのに。

いつまでも、お母さんと居たいのに。

いつまでも、兄弟仲良く居たいのに。

いつまでも、シロと遊んでいたいのに。






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2008年01月07日

少年の日4(前編) −お父さん−

The Story 4 −お父さん−




シロは とても頭の良い犬だった。

お手

おすわり

ちんちん

伏せ

待て

全部マスターしていた。



そのしつけをしてくれたのは、

近くに住む 魚屋のおじさん、『深津さん』。



僕がシロを散歩させていると、

決まって シロに おやつをくれた。



深津さん
「おー、シロ!

 来たか。

 よーし よーし。」


深津のおじさんは いつもこう言って

シロを よしよし してくれた。



シロも 深津のおじさんが

大好きだったらしく、シッポをふりふりしてる。



深津のおじさんは 会うたびに何か芸を教えてくれた。

ご褒美は 魚の干物だ。



深津さん
「この子は 本当に 頭が良いな。

 すごく 飲み込みが早いわ。」




「へえ、犬にも

 頭が良いとかってあるんだね。」



深津さん
「そりゃあ あるさ。

 シロみたいに 耳がピンってなってて

 シッポも くるんってなってるだろ?

 鼻の頭も 真っ黒。

 これが 頭の良い犬の証拠だ。」



シロを誉められると、僕もすごく嬉しい。

だから、毎日のように 深津さんのところへ通った。



深津さんは 子供がいなかった。

いや、正確には 2回流産したらしい。

それ以来、子宝には恵まれなかったそうだ。



だから余計にだと思う。

僕とシロを可愛がってくれたんだ。






********************





どこにでもいるような

普通の子供だった、僕。



普通に 学校行って、

普通に ご飯が食べれて

普通に 友達と遊んで

普通に シロとすごせていた 日々。



だけど、ある日を境に

僕の運命は 大きく曲がっていった。






それは あまりにも突然だった。





僕のお父さんは、繊維関係の仕事をしていたそうだ。

繊維工場の 倉庫の仕事。


その日も 普段どおり、朝早くに出かけていった。

僕もお兄ちゃんと 普段どおり 学校に行っていた。




お昼前だった。

僕とお兄ちゃんは、先生に呼び出された。



先生
「お前たち、今すぐ帰りなさい。



 お父さんが、、、



 亡くなったそうだ。」




僕は、「亡くなった」 という言葉の意味が

理解できなかった。



朝、普通に お父さんを見たのだ。

そのお父さんが、もう動かないなんて、

子供の僕に 信じられるはずが無かった。



深津さんとこの おばさんが

僕たち兄弟を迎えにきてくれていた。



おばさんに 手を引かれながら

僕たりは 家に急いだ。

その間、何をしゃべったのか、全く覚えていない。



家につくと、お父さんの顔には

白い布が被せてあった。



この時点でも、何がなんだか

分からなかったんだと思う。



お母さんが 今まで見たこともないほど

大声で 泣いていた。



「あなた〜〜〜〜〜〜!!!!


 (涙)


 うわぁーーーーーーー!!!!


 (涙) 」




その姿を見て、僕はだんだんと事態が

飲み込めたのか、

それとも、お母さんの そんな姿に驚いたのか、

とにかく 一緒になって大声で泣き出した。



お母さんは、右手にお兄ちゃんを、

左手にお姉ちゃんを、膝の上で僕を、

3人を抱えて わんわん 泣いた。






「お父さーーーーーん!!! (涙)」






僕も、お兄ちゃんも、お姉ちゃんも

一晩中 泣き通した。






「お父さーーーーーん!!! (涙)」






お父さんは 圧死だったっそうだ。



繊維製品が山積みになっている倉庫。

その繊維の山が、お父さんに向かって

倒れてきた。


お父さんは、声を出す間もなく、

その何トンもある山に潰されてしまった。

発見された時には、もう、息をしていなかった。






それからの事は、

実は、あまり覚えていない。

ずっとずっとずっと泣き通しだったからだろう。




(つづく)





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2007年12月28日

少年の日3 −僕のもの−

The Story3 −僕のもの−



僕は シロが来てから

全くみちくさをしなくなった。

早くシロと遊びたくって遊びたくって。




「キー君、今日うち来る?」


キー君
「うん。行く行く。」



「じゃあ、あとでね。」


キー君
「うん、あとでね。

 バイバイ。」



いつものようにキー君と遊ぶ約束をしたら、

家までダッシュだ。




「ただいま〜!

 それっ!」


僕は ランドセルを思いっきりぶん投げる。

そこに、そっと置けば良いのに、

なぜか できるだけ遠くに投げ捨ててた。

そして、ダッシュでシロのいる納屋に向かう。

母の「おかえり〜♪」は 聞いちゃいない。




「シロ! ただいま!」

シロは、小さいシッポを

1秒間に5回くらい振って迎えてくれた。

僕は、シロの両手をつかんで、顔を近づける。


ペロ ペロ ペロ ペロ ペロ ペロ



「シロっ

 くすぐったいよ。

 キャハハ」


当時は、今みたいに室内犬なんていなかった。

みんな番犬として、庭で飼っていた。


だけど、シロはまだ赤ちゃんだから、

納屋の土間に 木箱を置いて、

その中に 毛布を入れている。

これが シロのおうち。



きゅうん♪ きゅうん♪



シロも 僕のことが大好きだったんだと思う。

僕が 学校から帰ってくると いつも



きゅうん♪ きゅうん♪



って迎えてくれる。



「よし、シロ出ておいで。」



僕は シロを庭に連れ出し、

ボールで遊ぶ。



まだ、くわえて 持ってくることはできなかったが、

シロは 一生懸命 ボールを追っかけた。




「それっ!

 シロ!

 イケっ!」


よち よち よち





「あ、キー君!」


キー君
「シロ、もう元気だね♪」



「うん、元気だよ。

 もうね、ご飯も食べるんだ。

 シッポも振るんだよ♪

 見てて。」


僕は シロの両手をつかむ。


フリ フリ フリ フリ フリ フリ

きゅうん♪



「ね?」


僕は ある意味 残酷だったな。

キー君が 羨ましがってることが分からなかった。



キー君
「僕も やらして!」



「だめ! 僕しかダメ!」


キー君
「いいじゃんか!

 僕も やらしてよ〜!」



「だめったらダメ!

 僕のシロなんだよ!」





キー君
「・・・・


 ・・・・


 ・・・・。


 ぐすっ


 えぐっ


 うわーーーーーん」



僕は キー君が突然泣き出したことが 理解できなかった。

キー君は 家庭の事情で 犬なんて とてもとても飼えない。

子供なりに 自分自身に言い聞かせていたのだろう。

(僕がガマンすればいいんだ。僕が。)




母が 庭に出てきて 僕に事情を聞いてきた。

そして おもっくそ ビンタされた。



「キー君に 謝んなさい!!!」


僕は なぜ叩かれたのか分からない。

けど、優しい母が 怒ったことに驚いた。

「うわーーん!!」



「泣くな! 謝りなさい!!!」



「ご、ごめんなさい・・ うぐっ」


シロは きょとんとして こっちを見てる。



きゅうん♪ きゅうん♪




「キー君、やっていいよ♪」


「いいの?」と言いながら、

キー君が シロの両手をつかむ。



フリ フリ フリ フリ フリ フリ

きゅうん♪

ペロ ペロ ペロ ペロ ペロ ペロ


「あはは♪」 キー君が笑った。


僕も一緒になって笑った。


「あはは♪」 




**********************




シロの小屋は お父さんが作ってくれた。

どこかからか木の板と棒をもらってきて

数時間で作りあげた。

小屋の入り口には

『シロ』

と、木の棒で作った名前が 貼り付けてあった。

父はとても器用だったんだな。




僕は いつもシロと一緒だった。



野球をやる時は

シロを自転車のカゴに乗せて 広場まで行った。

夜になり、ボールが見えなくなるまで、野球をした。

シロは野球が終るまで 1人で遊んで待ってる。 





ある日、僕たちは裏の林にいた。


「ここに 秘密基地作ろうぜ!」


僕たちは 秘密基地 という響きに

わくわくしながら 兄を手伝った。


トタン板で 屋根を作り、ビニールシートを敷く。

廃屋から盗んできた 板で壁をつくる。


この頃は、こういう 宝(ゴミだけど)が 豊富にあったなあ。




「このままじゃ、敵にやられるなぁ。

 よし、武器をそろえよう。」


未だに この 『敵』 が誰なのか分からないが、

とにかく 『敵』 がいつ来ても良いように

備えなければいけなかった。


ちょうどいい大きさの石を シャツで作った袋に

たっぷり拾ってくる。


兄は タコ糸と 竹で 器用に弓を作った。

ちゃんと 矢尻に 鳥の羽根を差し、

それらしいのができた。



「シロ!

 お前は 番犬なんだから、敵が来たら知らせろよ!」


「ワン!!」

しっぽフリフリフリ♪


でも、結局 敵は 一度も現れなかったけどね♪



そして、アホみたいに 夢中になって作った基地だが、

フラフープのブームとともに、忘れ去られていった。



フラフープ。

もちろん、兄も僕もキー君も、キー君の弟も

みーんなみーんな夢中になった。

広場に行くと、それこそ村中の子供たちが

ふりふりしていた。


誰がどれくらい長く回せるか、が

子供たちの中で格付けされていたくらいだ。


中には 2本、3本と同時に回す子とかもいる。

年上のその子は 『殿』 と呼ばれていた。


僕「すげーよ! 殿!」


殿「どうだ〜

  まだまだ回せるよ〜〜〜〜〜〜!!!」







しかし、、、






なんか、『腸がねじれる』という、

意味不明の噂とともに、ブームは終りを告げる。




「殿」の権威は失墜し、

本名を呼び捨てで 呼ばれるようになっていた。








シロ、もうすぐ1才。








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pegasus_oda at 10:57|PermalinkComments(0)TrackBack(0)この記事をクリップ!少年の日 

2007年12月27日

少年の日2 −名前は?−

The Story2 −名前は?−



3人が川で 大声で泣いていると、

偶然、橋の上から 父が僕たちを見つけた。





「おーい!!

 どうしただ〜?!」



僕たちは 泣いていたから

何かあったと思ったのだろう。

父が 駆け下りてきてくれた。




兄が 事情を説明する。




「がんばったけど 2匹が

 流れて行っちゃった。。



 1匹だけしか 助けられんかった。。」 





「そっか。

 それは 可哀相なことをしたな。



 でもな、そういう運命だったかもしれん。

 助かったこの子も きっと助かる運命だったんだ。



 しかし、、、

 あれだな。



 この子達を 捨てたのも 人間なら、

 命を救ったのも 人間。



 人間ってやつぁ 色々だ。」




父は たまに こういう哲学的なことを 言う。




「でもな、お前たちも 危なかったぞ。

 川は 急に深くなったりするし、

 上の方から 鉄砲水が 来ることもある。

 大人と 一緒じゃなきゃ危ないぞ。」



兄&キー君&僕
「ハイ、、、



 ごめんなさい、、、」





「さ、もう帰ろう。



 それと、その犬に

 あったかい牛乳飲ませてやろう。



 うちに行こう!」




「うん。」



父は とても優しかった。

僕は そんな父が 大好きだった。




でも、一つだけ、家に帰る前に

どうしても言っておかなければならない。




「お父さん、、、、」




「なんだ?」




「あの、、、


 お母さんに みちくさしたこと

 内緒にしといて欲しいんだけど。」




「ははは。

 なんだ、そんなことか。

 わかった、わかった。(笑)」




キー君ちは 家に帰る途中にある。

あとで 僕んちに 犬を見に来る約束をして

一旦 別れた。



キー君
「じゃあね、バイバイ!」



僕&兄
「バイバーイ!」



家に着くと すぐにお母さんを見つけた。




「おい!!

 母さん!!

 牛乳あっためて 持って来てくれ!!」




「はいはい。


 なに?

 

 あら、

 こんな小さい犬 どうしたの?」




兄が説明した。

川に流されていたこと、

一生懸命がんばったけど

他の二匹を助けられなかったこと。



この時点で、みちくさをしたこと、

バレバレだったが、

母は僕たちを とがめなかった。




「そういうことね。

 とにかく、この子に 牛乳あげなきゃね。」

そう言って 台所へ向かう。




「あんまり 熱くしたら飲めんぞ。

 人肌な。」




「はいはい。」




母は お椀で 牛乳を持って来てくれた。




「おい、 チビ!

 牛乳だぞ。 飲め。」




子犬は まだ震えていた。

牛乳も 飲もうとしない。



「弱ってるのか、、、?」



その言葉に、どっきりした。

僕も、兄も、母も、

じっと子犬を見つめる。





父が 指に 牛乳をつけ

子犬の口に運んだ。






飲め!






飲むんだ!!






飲まなきゃ 死んじゃうぞ!!!








『ぺろ』







「あ、なめた!」




「よし!」





よほどお腹が空いていたのか、

喉が渇いていたのか、

それからは あっという間に 牛乳を飲んだ。





「とりあえず、安心ね。

 さ、あんたちも 牛乳飲みなさい。」

そう言って、母は 僕たちにも牛乳を飲ませてくれた。



僕は 牛乳を飲みながら 子犬を見ていた。 



恐かっただろうな。

心細かっただろうな。

お腹も空いていたんだろうな。



子犬は 安心したのだろう。

お父さんの 胡坐(あぐら)の上で、ウトウトしだした。




「ねえねえ。

 この犬、飼ってもいい?」




「ん?

 、、、、


 、、、、


 せっかく 助けた命だもんな。

 流されていった 兄弟の分まで

 一生懸命 大事にしてやろう。」




「ちゃんと 自分達で 世話するんだよ。」



僕&兄
「やったあ!」




「しーーーっ。

 今、眠ったとこだ。





 よし、お前たち二人に宿題な。


 この子の名前、考えとけ。」




「うん。わかった。」



しばらくして、キー君と弟のマー君が来た。



キー君
「♪りょーお ちゃん

  あーそーぼ♪」


子供は人んちに行く時、何で普通に

「こんにちは」 とか 「ごめんください」

って言わないんだろう?

ま、それが子供らしくて 良いっちゃ良いのだが。



キー君
「犬いる?」



「うん。

 今、牛乳飲んで寝たところ。」


キー君
「ねえ。

 それで、この犬、どうするの?飼うの?」



「うん。

 お父さんが飼っても良いって。

 だから これから 名前考えるんだ。

 キー君も なんか考えて。」



キー君は 寂しいような 悲しいような

でも、ホッとしたような そんな顔をしていたんだと思う。



キー君だって、本当は犬、飼いたかったはずなんだ。

だけど、そんな余裕がないこと、

子供ながらに理解していたんだと思う。



キー君ちは お父さんが 出稼ぎに行っている。

お母さんは 体が丈夫じゃなくて 寝込んでることが多い。

だから、家のことは 中学生のお姉ちゃんがやってて、

キー君は 弟の面倒を見なくちゃいけない。



だから、「犬を飼いたい」 なんて言えなかった。



キー君
「これからも、犬、見に来てもいい?」



「うん! いいよ。」






さあ、お父さんの宿題。

子供たちだけの 名前会議がはじまった。


「ゴジラ」

「ラッシー」

「月光仮面」

「佐助」

「アトム」


みんな、半分冗談で 思い思いのこと言ってる。

僕たちは やっぱり 強そうな名前しか思いつかない。


でも、どれも 犬には 似つかわしくないこと自覚していた。




毛布に くるまってる子犬。

よっぽど安心したのだろう。

スヤスヤ眠ってる。



みんな、この白い子犬を見つめながら

途中から 真剣に考え始めた。 



真っ白な体の子犬。

子供でも 抱っこできるほど 小さい犬。



候補は2つに絞られた。



「シロ か チビ だな、、、

 よし、多数決で決めよう。」


なんちゅう民主的な決め方。

へんなとこは 大人びてるんだな、この兄は。



「チビがいいと思う人。


 ・・・


 0人。



 シロがいいと思う人。


 ・・・


 5人。」


ほんとに 議論 割れてたのか?(笑)



ということで、この子犬は 『シロ』 に決定した。



ちっちゃい ちっちゃい シロ

かわいい かわいい シロ



今、どんな夢見てるんだろう?

お母さんの夢かな?

兄弟の夢かな?








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pegasus_oda at 10:53|PermalinkComments(2)TrackBack(0)この記事をクリップ!少年の日 

2007年12月26日

少年の日1 −みちくさ−

The Story1 −みちくさ−





昭和35年

僕が 小学校3年生の時の話だ。





学校の帰り道、僕はいつものように

一番の仲良し、キー君と一緒に帰っていた。



キー君とは、家が近所ということもあり

幼稚園からの仲良しだ。



キー君は いつも靴を 右左反対に履いてる。

背中から シャツが出てる。

それがトレードマーク。

でも、工作や絵を描くのがとても得意だ。



ケンカも しょっちゅうする。

その度に 「お前なんか 絶交だ!」

と言って別れるものの、

いつの間にか 仲良くなってる。



そんなキー君との帰り道。



先生からは

「道草禁止 まっすぐ帰れよ」

と言われちゃいるが、

小学3年生の僕達にとって、それは、

『ハンバーグの見張りを頼まれたハクション大魔王』と同じ。

ガマンできるわきゃない。




「キー君、みちくさ していこうぜ!」


キー君
「お母さんたちには ナイショな。」


二人
「♪わかっちゃ いるけど やめられねぇ♪

 ア ホレ スイスイ スーララッタ

 スラスラ スイスイスイ〜




 あはははは!」






「魚 見に行こう!

 お兄ちゃんが この前 魚 いっぱい見たって。」



キー君
「どこで?」




「青木川らへんだって。

 橋から 見たんだって。」



キー君
「よし、行こ行こ!」



ランドセルを背負ったまま、僕たちは 橋の方へ走り出した。



キー君
「うわあ

 ほんとだ!

 魚、いっぱいいる!!」




「すげぇ!

 あのへん 見て!

 ジャンプしてる!!」



キー君
「なんていう名前かな?」




「フナかな?」



キー君
「聞いたことあるよ フナ。

 あれ フナだね。」




その時、後ろから人が近づいてくる。

気付かれないように そうっと そうっと。



「わっ!!!」



二人
「うわぁーーーーーー!!!」



突然 後ろから 脅かされて

僕たちは びっくりした。




「お兄ちゃん!」



キー君
「なんだ、ヨッチかぁ。

 びっくりしたなぁ。」




「みちくさ みーーーっけ!

 先生に 言ってやろ!」




「お兄ちゃんだって みちくさやんか!」




「ばーか。

 お前たちが みちくさ してるの見つけたから

 追いかけてきただけ。



 みちくさを 最初にやった お前たちが悪い。

 俺は 悪くないの。」



キー君
「そんなの ずるい!

 みちくさは みちくさじゃん」




「先生には 言わんよ。

 バ〜カ。(笑)



 それより すげえだろ?

 さかな!



 俺が最初に 見つけたんだからな。」



キー君
「すっごい いっぱい。

 あれ フナ?」




「フナ・・・かなあ?


 たぶんフナだ。」



何年かして、それは ハエ

という魚だということがわかった。

でも、この時は、兄がフナと言ったから

フナだと信じ込んでいた。

『兄は僕より 物知りだ』と

100%思ってたので、

彼の言葉を信じた。






「あっ!!!!」





3人のうち、誰が最初に

それ を見つけたのか?



いや、誰が最初って言うよりは、

3人とも同時に目が行ったのだ。



あまりにも衝撃的なものを

3人は見つけてしまった。




「犬だ!!!」




「流されてる!!!」




僕たちが見つけた それ は、

3匹の子犬だった。

ダンボール箱に乗って 流されている。




「行くぞ!

 助けるんだ!!!」




「うん!!!

 早く!!!」



キー君
「助けよう!!!」



上流の方から 流れてきたのだろう。

ダンボールの船は 水を吸って ふにゃふにゃ。

放っておいたら 確実に溺れてしまう。

子供ながらに それは すぐ理解できた。




堤防を駆け降りる3人。



キー君が 竹の棒を 見つけてきた。




「それ、貸せ!」



兄は5年生で、僕たちより でかかった。

その兄が限界まで 手を伸ばす。




「だめだ!!


 届かん!!」




「こっち来い!!

 こっち来い!!

 こっち来い!!」


僕は 手で水面を手前に掻いた。

だが、そんなんで寄って来るわけ無い。



この川は、幅5メートル程度だったと思う。

深さも そんなに深くない。

大人なら 歩いて渡れる程度だが、

僕たちにとっては すごく 巨大だった。




流されていく ダンボールの船。

流されていく 子犬たち。




「くぅ〜〜〜〜〜〜ん」

「きゅぅ〜〜ん」

「きゅんきゅん」




3匹が 泣いている。




僕達には

『たすけて〜〜』 と聞こえていた。




「待てーーーーー!」



「待てーーーーー!」


キー君
「待てーーーーー!」



川辺を 流れていく ダンボールの船。

僕たちは 見失わないように

川べりを がむしゃらになって走った。

僕は 泣きながら追っていたと思う。




この日、水かさは少なかったのだろう。


川の中央には 中州が現れており、流れが分岐していた。




「こっち来い!!!」



中州の 頭で 船が止まる。



キー君
「こっち!!!」



留まっていたのも つかの間。

船は 再び ゆっくり 動き出す。 




「こっち!!! (泣)」



船は うまい具合に こっちの流れを選択してくれた。




「よし!」



一番体の大きい兄が 運動靴のまま

川に 入った。




ふにゃふにゃのダンボール船。

もう、中にまで、水が沁み込んでいた。



思いっきり手を伸ばす 兄。





あと5センチ!!






もうちょい!!




もうちょっと!!!





届いた!!!





まず1匹 白い子を 拾い上げる 兄。




船が 流れていかないように

左足で せき止める。



大きく足を開いて 両手を伸ばし

白い子を 僕へ渡そうとした。




「良太!


 キー!
 


 早く!


 この子 とって!」



僕が 白い子犬を 受け取った瞬間だった。




「あっ!!!」



キー君
「ああーーーーっ!!!」



兄の左足で 引っ掛けてあった船。

内側が 水で満たされてしまい、

転覆してしまった!!!




残りの2匹は 川に放り出され、

そのまま 流されていった。




くぅ〜〜〜〜〜ん

きゅ〜〜〜〜〜ん




必死になって バシャバシャもがく2匹。

だが、幼い子犬に 泳ぐ力など あるわけもなく、

そのまま 下流に流されてしまった。





呆然とする 3人。


目の前で、2つの命が流されていく。







「ぐすん。

 ぐっ

 えぐっ、、、、」


一番年長の兄が 泣き出したものだから、

僕も キー君も つられて泣いた。



3人とも 声が枯れるまで 泣いた。

「うわーーーーーーっ」

「ひっく ひっく」

「びぇーーーーん」




唯一助けることができた 白い子犬。

僕の腕の中で 小さく震えていた。








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2007年11月22日

うなぎの恋 あとがき

うなぎの恋

これを書こうと思ったのは、
前作『天空の声』で信吾が
やたらと人気があったから。

あと、『天空の声』では、信吾が
大正庵を継ぐって設定だった。

そうすると、公美と一緒にならないと
継げないからね。

で、結婚させるんだったら、
それにまつわる話、書こうと思ったわけです。

そうなると、やっぱ恋愛か?
となって、この話は出来上がりました。


公美も信吾も 本当に愛すべきキャラに
なってくれて、自分でもすごく嬉しいです。

そうそう、愛すべきキャラといえば、
意外な人気の 「金倉 譲」。

すっげー嫌なやつにしようと思ったら、
意外と人気が出ちゃった。

彼の成長物語も、書いたら面白いかな、
なんて思ってるわけで、気が向いたら
書きます。

息子の俊介が なぜ、「大正庵で修行したい!」
と言ったのか。

そのへんもね。


今回も、自分自身で楽しめました。
全て、読んでくれる皆さんのおかげです。


ありがとう!
感謝!


あっちゃん 拝





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